あなたと過ごすよくある晩餐のためのレシピ・その1
灰色の空の下でたまねぎを剥ぐ ひとかわ、ひとかわ、指でていねいに剥ぐ 僕は不器用だから、いくら剥いでも剥いでも きっと傷をつけて傷がついて なみだを流してしまうが 雨も降っているので洗う手間もはぶける
剥いだかわを水溜まりにさらして 辛味を嗜むのもいいけれど できるものなら、あなたが熾してくれたこの炭火で 痛めて痛めて、じっとりと雨色になるまで痛めて スープの出汁にする
どんなふうに作ったところで、この泥水のように見えるスープは、甘い味がする
僕はというと、猫舌だし、 葱とか玉葱とからっきょうとかそんなものを食べる時は、 胃薬持参でお腹をさすりながら、 スープが冷めるのを、指をくわえてながめている