あなたと過ごすよくある晩餐のためのレシピ・その1

date. 2001

灰色の空の下でたまねぎを剥ぐ
ひとかわ、ひとかわ、指でていねいに剥ぐ
僕は不器用だから、いくら剥いでも剥いでも
きっと傷をつけて傷がついて
なみだを流してしまうが
雨も降っているので洗う手間もはぶける

剥いだかわを水溜まりにさらして
辛味を嗜むのもいいけれど
できるものなら、あなたが熾してくれたこの炭火で
痛めて痛めて、じっとりと雨色になるまで痛めて
スープの出汁にする

どんなふうに作ったところで、この泥水のように見えるスープは、甘い味がする

僕はというと、猫舌だし、
葱とか玉葱とからっきょうとかそんなものを食べる時は、
胃薬持参でお腹をさすりながら、
スープが冷めるのを、指をくわえてながめている


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