4つのソネット

date. 2000

―1―
よく見てごらん。
ゆらゆらしている蜘蛛の糸。
アタリをつけてきてごらん。
そこは君の居るところじゃない。
暗い暗い井戸の中。

―2―
夢から醒めるみたいに、
花畑を除く一切のものは、みんなとつくに終わつてしまつた。
はじまりも終わりもどうして自分で選べないのかな。

―3―
曹達水のプールの底に沈んで深呼吸をする
頬杖をつきながら待つ夏の午後

クリームソーダ。
日差しが強くなってくると、ひと休みした喫茶店で探すもの
レモンスカッシュでも、ジンジャーエールでもなくって
緑色したメロン味の曹達水
もちろんアイスクリームを浮かべて
あわてたり、強引にクリームを沈めようとするとこぼれちゃうので
ゆっくりゆっくり
炭酸とクリームの温度が同じになるまで
自然に溶けるクリームをまぜまぜしながら飲む
真っ赤なチェリーがお望みであれば、最初に取るのを忘れずに

―4―
気がつけば迷い込んだけものみち
道無き道を探してさ迷う

狐の嫁入り。
強い日差しの中から落ちてくる雨
境界線はどこだろう?
傘をはずしてキチンと確認できるように
あと5メートル、小走りに歩いてみる

雲のないところに雨は降らない
風で飛ばされたのは、雨か雲か

めずらしく晴れた水無月の朝、
式場に向かう山道できつねの嫁入りに遭遇する
白無垢だろうか?それとも角隠し?
目を凝らしてみたが見えるはずもない
黒澤映画の夢に出てきた花嫁は白狐だった
静かに夢見るように歩む婚礼の行列

夢か現か

今となっては全てが幻のように、
一人でこの通り雨の中に佇んでいる


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