金平糖

date. 2012.10

初冬のこんな寒い日には、忘れられない、でも幽かになってしまった気持ちを想う。金平糖の心を想う。時間に転がされてまあるくなったトゲを想う。

確かにあの頃は情熱があった。勢いで離れられる自分がいた。一方で一緒にいることよりより離れるほうが何十倍も情熱がいることを思い知らされた。その些細な言葉や行動が築きあげた一つの金平糖。あまいトゲをもつ金平糖が僕の心にこぼれ落ちた。

飛び乗ったタクシー、街灯がひそやかに映し出す青白い顔。今を生きるのに精一杯だったあの頃の僕、時は流れ永遠を誓った僕。愛がなければ生きていけないと想いうなだれた僕。

崩壊は偏西風がふく頃にやってきた。あっというまの出来事だった。愛情はどこへ向かっていけばいいのかわからず、宙ぶらりんのまま、心が甘い金平糖をつくったのだった。 がりがりと噛んでしまえばおしまい、そんなふうにクールにはなれなかった。もしも甘い記憶という砂糖で出来ているならば、ころころと舐めていれば時間がかかっても痛みは消える。戒めと想って金平糖のトゲを舐める。

ただ今は、僕は君に血だらけのキスをしたいだけだ。


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