ワンダーランド |
date. 2012.10 |
十月も上旬を過ぎて、そろそろ小春日和なんていう言葉を耳にしてもおかしくないというのに、今日も太陽は夏の輝きを失わない。里でも紅葉がはじまっていることだし、日陰のある場所を歩いたり、風が頬をなでるときは秋の気配を感じるというのに。
窓から差し込む陽を背中に浴びて、首筋がじっとりと汗ばむ。名前の知らない小鳥のさえずりを耳にしながら、季節の変わり目の体調もあいまって下瞼が上の瞼にくっつきそうな昼下がりである。こんな日は不思議の国に行って、チェシャー猫に会いたいと思う。当たり前で哲学的な会話を変にはぐらかし、頭だけの猫にさよならを言うだろう。二時間くらいの時間はあっという間に経ち、今は三時のお茶会の時間だ。僕はひとりで重い身体を起きあげて、冷たいミルクティにビスケットをそえよう。
「不思議の国のアリス」より、
〈自分の涙で溺れるのなら、あんなに泣かなきゃよかったわ〉
〈世の中には意味のあることが多すぎて、僕はもうついて行けない〉
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