ロイヤルブルー

date. 2007.12

アスファルトの灰をかぶった雪渓のような色の空から音もなく雨が零れている。
厚い雲に覆われたちっちゃな世界は、どこもかしこも影が薄い。芽吹きはじめた百日紅の枝も、すれちがうワンボックスカーも、飲みかけのペットボトルのウーロン茶も。
本を配達してくれる宅配便のおじさんはあいかわらず饒舌だ。今日も「奇妙な天気だねえ世の中も変だけど」などといっせきぶって仕事に戻っていった。
届いたのは、クラウド・コレクターの手帖版(文庫)と須賀敦子さんのエッセイ本だ。手帖のほうはその手帖部分が青インクで印刷されていて感動する。なにしろ僕の愛用の筆記具はLAMYの水性青インクのボールペンだからだ。
雨足が強くなってきた。日暮れのせいかより影が薄くなっている。そのうちまっくらな闇にのみこまれるのだろう。僕自身も。
あわててキャンドルに明かりを灯す。


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