冬・・・不埒 |
date. 2008.3 |
身体を舐めるように吹き抜ける風は骨の自由を奪うように冷たいが、陽光は確実に昨日より強い。しかし屋根にしがみついている雪塊を剥がすには、まだ光が足りない様子だ。今月、いや今年になって、かなりの数、雪をかいた気がする。凍った雪を身体いっぱい使ってかいて、雪かき用のシャベルを二つ駄目にした。明日は弥生の空になるけれど、まだ油断はできない。
朝、顔を洗っていて、ふと昔のことを思い出す。鏡に映る顔色は深い湖を映したように青ざめている。
恋人がいるのに、昔の男ばかりを思い出す僕は不埒なのだろうか。思い出すのは男達との幾つかの別れの場面だ。記憶している場面がフラッシュバックして目に浮かぶ。ちらちらと瞳の奥に幻影を作る。
忘れられないのなら、いっそのことののしって悪態をつけばよかった。なにもかも飲み込まなければよかった。
今、心を縛るのは西日のように伸びた男達の影だけだ。ぐっ、となる。一瞬だけ。そう一瞬だけ。
別れた男達とは友人になれない。友人になれたのは、若いカラダを若さゆえに抱き合った男だけだ。それも僕だけの思い込みかもしれないけど。
ひとつ屋根の下、家族のように親しくなってしまうせいだろうか。それとも相手のことを心底嫌いになるまで、離れられないからだろうか。憎むからか。未練からか。どちらでもない、という関係は僕には成立しないのだ。
憎んで苦しんで身が裂けるほどの思いを持った相手とは、どちらでもいいという思いに確実に変わるのだけれど。
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